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「あわのまにまに」ができるまで その1

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 新刊が出るときにしか更新されないブログです。 KADOKAWAから「あわのまにまに」というタイトルの小説が刊行されました。章ごとに視点人物が変わり、2029年から1979年へと、十年刻みで時間をさかのぼっていく構成なのですが、連作というよりは長編というほうがしっくりくるかんじになってます。 最初、連載担当の(う)氏から依頼をいただいたときは、まだ「マリー・アントワネットの日記」を連載していたころで、いちばん最初のオーダーは「男女のバディもの」ということでした。お仕事小説のようなイメージが最初に浮かび、恋愛関係に陥らない男女コンビがバリバリ活躍するエンタメ作品は私も大好きだし、そんな小説があったらぜひ読みたいが、自分がそれをうまく書ける気は正直まったくしなかった。 いろいろ考えているうちに、さまざまな男女の関係性を書いた短編集はどうだろうと思いついた。高齢者同士のセフレとか、親の恋人や妹の夫との微妙な関係性とか、男友だちとずっといっしょにいるためにはどうしたらいいんだろう(おたがい異性愛者だったとして、それぞれにパートナーがいる場合、その関係が変容してしまったりはしないのだろうか)とか。一年に一篇短編を書き、それを十年続けて短編集にしたら、日々めまぐるしく価値観が変わっていく現代の様子が自然と浮かび上がってくるのではないか、というアイディアだったのだが、「そんな悠長なことはやってられないから三ヶ月に一篇ください」とあっさり言われてしまった。そりゃそうだ。私が編集者だったらそう言う。 そんじゃもうしかたないから私が時間をさかのぼるしかないな、ということになり、十年刻みで恋愛観や結婚観、家族観、時代の価値観を追うという構成を思いついた。ただの短編集というよりは、なにかひとつの連なりがほしいと欲しがりな(う)氏が言うので、一人の女性の誕生から六十年間の半生を追うことになり、あれこれ設定を考えているうちに、あ、これ時間を逆走したほうが面白いかも、と思いついた。「私の男」「ペパーミント・キャンディー」「黄昏の彼女たち」など、時間をさかのぼる構成の先行作品はいくつもあり、いつか自分でも書いてみたいと思っていたのでちょうどよかった。 実際に書いてみたら、「男女の関係」に留まらないさまざまな関係を描いた家族クロニクルになりました。帯の煽りがとにかくすごいんで見ていってやってください