「女優の娘」ができるまで 2


発売までに"「女優の娘」ができるまで"について書いておきたかったのに、あっというまにファッキンひなまつりになってしまった。この国でいま女性が置かれている状況にぶちキレながら書いた小説がよりによって3月3日に発売だなんてなんと皮肉なことだろう。

娘の視点から見た母親(ポルノ女優)を書くと決めたとき、娘もまた自動的に女優するつもりだった。女優といっても、「本格派」「実力派」「性格俳優」「女を売りにしていない」といわれるようなタイプで、舞台を中心に活躍している。「女優」と呼ばれることを好まず「俳優」と自称している。年齢は三十代後半で子持ちのシングルマザー。

……なんでこんなに詳細な設定が出てくるかというと、連載の第一回目を書いたからである。そしてまるまるボツになったからである。

「いやなんか筆が重だるいし、この設定あんた向いてないから、いっそのこと娘をアイドルにしちゃったほうがよくないっすか?」

とそんな口調ではもちろんなかったが、おそるおそるといったかんじに担当氏に提案され、「えっ、無理」って最初は思ったのに、たしかにそっちのほうが向いてたのか、するする書けてしまった。パシっとあざやかにキマってしまったかんじがあった。なんという慧眼だろう。担当氏すごい。

20代半ばのアイドルの女の子が母親の死をきっかけに母親を知る旅をする。なんだか冒険小説のようだと思いながら書いていたが、文庫版の帯には、

「アイドルの"リアル”を鮮やかに描き出した、傑作青春小説!」

とある。


この小説を青春小説と言い切ってしまう、その剛腕と潔さにびっくりしてしまったが、しかしよくよく考えてみたらこれはまぎれもない青春小説なのだった。母親のことを知ることで、主人公のいとは自分自身を知ることになる。これが青春小説でなくてなんだというのだろう。


解説はあやちょこと和田彩花さんにお願いした。

この小説の解説を書いてもらうのに、おそらくこの世界でいちばんふさわしい人なんじゃないかと思う。いとがアイドルをしているのは、承認欲求を満たすためというより、アイドルの仕事に楽しさを見出しているからだという指摘には、当事者ならではの視点だとハッとさせられた。文末で読者に向かって和田さんが投げた問いかけは、そのままどう生きるかという問いでもある。

どうか、解説と合わせて読んでもらえたらと思う。

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