「流れる星をつかまえに」ができるまで1

 


週明けには書店に並びそうな気配がするので、新刊時恒例(?)「できるまで」シリーズです。

このブログでさんざん連作のことをあしざまに言っておきながらマジでサーセンとしか言いようがないのだけれど、「流れる星をつかまえに」は六篇の短編からなる連作短編集です。マジごめんて。


というわけでここからは言い訳です。

そもそも今回の本は、2016年に出版された「ナゴヤドームで待ちあわせ」(ポプラ社)という中日ドラゴンズアンソロジーに寄せた短編が起点になっています。

いまだから言えるけど、このときほどネタだしに苦労したことはなかった。名古屋在住とはいえ野球にはまったく興味なし。ドアラには興味があるけれど、ドアラを主人公にした二次創作だといろいろと権利関係がむずかしそう。うーん、うーん、うーんとあれこれ調べているうちに、チアドラゴンズの存在を知り、これならいけるかと思ったのだが、いやでも実在する公式団体だし、こちらもいろいろむずかしそう。うーん、うーん、うーんと唸っているところに、ママチアというイベントが過去にナゴヤドームで行われていたことを知り、「これだ!」となったわけです。

そもそもミニスカートやらショートパンツやらを穿いたチアガールたちが、おもに男性スポーツを応援するためにひらひら踊るという、この構図自体にいろいろ問題があるのだが、それはそれだし、好きでやってる人にとやかくいうつもりもないが、ここにひとつ、「ママ」という要素をかぶせたら、これまで語られなかったチアアップの物語になるんじゃないかって。さらにアメリカ学園ものの要素を取り込めば、楽しく華やかなエンタメ作品になるんじゃないかって。


実際に書きあがった短編がそうなっているかはさておき、ポプラ社の担当氏といえば「女優の娘」の連載初回をまるまる書き直させた敏腕&鬼編集者としてこのブログではおなじみ(?)ですが、このときもすごかった。なにがすごかったって、せっかく短編を書いたのだから、なにがなんでもここから連作に発展させろ圧がすごかったのである。

しかし、わたしも負けてはいなかった。

「えーでもさあ、ただ人物がちょっとずつ重なってるだけのリレー形式の連作ってもう飽和状態だし、書いててもあんま面白くないしさー。このチアママたちそれぞれの家庭の話を書いたとしてもたぶんそんなにバリエーションが出ないし、なんかありがちじゃーん!」

と打ち合わせでごねにごね、その日は言質を取られずに済んだものの、

「でもまだあきらめてませんからねっっっ」

と担当氏に鋭い目でにらみつけられ、ほうほうのていで帰ってきた。


しかし、それからしばらくしてから、ふと思いついてしまったのだよね。

映画をテーマにしたらどうだろう、と。

シネフィルに向けた知る人ぞ知るようなマニアックな映画をアクセサリー的に用いるような小説ではなく、市井の人々がそれぞれ好きな映画(大衆映画でもジャンル映画でもミニシアター系でも)を好きなように楽しんでいる様子を描いた、人と映画のつきあいかたを描いた連作なら書けるかもしれない。

いったん思いついてしまったら、「プロムをやりたい女子高生」「ムーンライトをひとりで観に行くゲイの男の子」「こじらせ文化系教師」など、次から次にアイディアが出てくる出てくる……


そうなるともう黙っていられずソッコーで担当氏にメールしたところ、

「やりましょう!!!!!!!!!!!」

強い力でソッコー返事がきた。

そんなわけで、連作短編集になってしまった、というわけです。マジでごめんて。





コメント

このブログの人気の投稿

「コンビニエンス・ラブ」発売しました!

『あわのまにまに』が山本周五郎賞の候補に選ばれました

第28回島清恋愛文学賞をいただきました